多摩都市モノレール町田方面延伸計画
多摩都市モノレール町田方面延伸は、現在の南側の終点である多摩センター駅から、町田市内を縦断して町田駅方面まで延伸する計画です。選定された基本ルートの延長は約16キロメートルで、多摩市と町田市を南北方向に結ぶ新たな基幹交通軸の形成を目指しています。

町田市内の鉄道駅は、市域の東側や南側など外縁部に位置しており、市の中央部や北部では、日常の移動を路線バスや自動車に大きく依存しています。町田方面延伸には、こうした地域の交通利便性を向上させるとともに、多摩センター、立川、町田という多摩地域の主要な拠点を南北方向に結び、多摩地域全体の公共交通ネットワークを強化する役割が期待されています。
町田方面延伸は、2016年4月に国土交通省の交通政策審議会がまとめた第198号答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」において、「東京圏の都市鉄道が目指すべき姿を実現する上で意義のあるプロジェクト」と位置付けられました。答申では、事業化に向けて、関係する地方公共団体や鉄道事業者などが具体的な調整を進めるべき路線とされています。
この答申を受け、東京都は2019年10月、学識経験者、東京都、町田市、多摩市、多摩都市モノレール株式会社などで構成する「多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会」を設置しました。導入空間となる道路が確定していなかった区間について、速達性、利用需要、費用対効果、沿線のまちづくり、道路整備、周辺環境などの観点から、複数のルート案を比較しています。
検討委員会は2019年10月から2021年12月までに4回開催され、2021年12月27日、三つの検討ルートのうち「B案」が基本ルートとして選定されました。B案は、多摩センター駅から町田駅方面へ向かい、野津田公園、日大三高周辺、小山田桜台団地、桜美林学園、木曽山崎団地、町田市民病院、芹ヶ谷公園など、既存の住宅地、学校、医療施設、公園、中心市街地を結ぶ延長約16キロメートルのルートです。なお、これらは基本ルート上の主な拠点を示したものであり、駅の設置場所や駅名を示したものではありません。
B案は、他の案と比べて多摩センター駅と町田駅との間の速達性ではやや劣る一方、小山田桜台団地や桜美林学園など、一定の利用需要が見込まれる地域を経由します。野津田公園、町田GIONスタジアム、野津田高校、日大三高などへのアクセス向上が見込まれるほか、既存道路のある地域を通るため、新駅周辺における沿線開発や新たな需要の創出が期待できる点が評価されました。検討委員会では、速達性だけでなく、モノレールと沿線まちづくりとの相乗効果を重視してB案を選定しています。
ただし、B案がそのまま最終的な事業ルートとして確定したわけではありません。東京都はB案を基本としながら、沿線まちづくりによる需要創出の状況や収支採算性の精査結果などによっては、比較対象となったA案やC案を改めて検討する可能性があるとしています。現在も基本ルートと他のルート案を比較しながら、事業化に向けた検討が続けられています。
都市モノレールは、一般の鉄道とは異なり、道路と一体となって整備される交通施設です。軌道桁、支柱、駅舎などの基本的な施設である「インフラ部」は、原則として道路の一部として道路管理者が整備します。車両、電車線、信号・通信設備、変電設備など、運行に必要となる「インフラ外部」は、多摩都市モノレール株式会社が整備する仕組みです。このため、町田方面延伸を実現するには、モノレールの走行空間や駅を設置できる幅員を備えた道路の確保が不可欠となります。
基本ルートには、既存の都市計画道路を利用できる区間がある一方、道路が未整備の区間や、モノレールの支柱・駅施設を設けるために拡幅や構造の検討が必要な区間も含まれています。東京都、町田市、多摩市、多摩都市モノレール株式会社などの関係者は、道路とモノレールをどのような構造で整備するのか、駅部に必要な空間をどのように確保するのか、各機関がどの施設を担当するのかといった具体的な検討を進めています。
町田市では、導入空間となる町田都市計画道路3・3・36号相原鶴間線の整備を促進するため、「多摩都市モノレール町田方面延伸加速化プロジェクト」を実施しています。この取組では、東京都の事業着手前に、都立町田高校付近から芹ヶ谷公園付近までの約1キロメートルについて、土地所有者から売却の意向が示された場合に町田市が事業用地を先行取得します。東京都による道路事業の着手後、取得した土地を東京都へ引き継ぐことで、将来の用地取得と道路整備を円滑に進めるものです。
町田駅周辺では、原町田大通りを北東方向へ延伸する町田都市計画道路3・4・11号停車場成瀬線の整備も進められています。整備区間は、町田街道の原町田五丁目交差点から町田都市計画道路3・3・36号線までの約520メートルで、芹ヶ谷公園へのアクセス道路になるとともに、将来のモノレール導入空間として利用される予定です。東京都が事業費を負担し、町田市が用地取得や設計などの実務を担う「みちづくり・まちづくりパートナー事業」として進められています。
延伸の実現には、道路やモノレール施設の整備だけでなく、安定した利用需要を確保できる沿線まちづくりが重要です。東京都は2021年のルート選定後、町田市と多摩市に対し、住宅、商業、業務、教育、医療、観光、交流などの都市機能を沿線へ誘導し、モノレールの利用につながるまちづくりを具体化するよう求めました。
これを受けて町田市と多摩市は、2022年8月に「多摩都市モノレール町田方面延伸 沿線まちづくり検討会」を設置しました。検討会は全6回開催され、沿線地域の現状や課題、モノレール開業後に目指す暮らし方、駅周辺に必要となる機能、段階的に取り組むべき施策などを検討しました。2023年12月20日から2024年1月19日まで構想素案に対する市民意見募集を行い、その結果を踏まえ、2024年3月に両市が「モノレール沿線まちづくり構想」を正式に策定しています。
同構想では、モノレールの延伸を単なる移動手段の整備として捉えるのではなく、駅を中心とした生活圏の形成、団地再生、公共施設や商業施設へのアクセス向上、歩行者・自転車・路線バスとの連携、交流人口の拡大などを一体的に進める方針が示されています。町田市では、木曽山崎団地地区の再生、野津田公園周辺の魅力向上、町田市民病院へのアクセス改善、芹ヶ谷公園と町田駅周辺の連携、町田駅周辺の再整備などが、延伸と関係する重要なまちづくりの取組となります。
2024年度からは、東京都、町田市、多摩市、多摩都市モノレール株式会社などで構成する連絡調整会議が開催されています。会議では、導入空間となる道路の整備方法、モノレール施設の構造、建設費や運営費、想定利用者数、費用対効果、開業後の収支採算性など、事業化の判断に必要な検証が進められています。
2026年7月時点では、延伸による収支採算性などの検証、走行路となる道路設計の深度化、関係機関との協議が行われている段階です。この後、事業を実施するかどうかの判断、事業化決定、調査・設計、軌道法や都市計画法に基づく各種手続き、用地取得、施設整備など、多くの段階を経る必要があります。
したがって、町田方面延伸は事業化に向けた検討が具体化しているものの、箱根ケ崎方面延伸のように、都市計画決定や軌道事業特許を取得して建設段階へ移った事業ではありません。現時点では、正式な駅数、駅の位置、駅名、事業費、工事期間、開業年度は決定・公表されていません。
町田方面延伸が実現すれば、多摩センター駅から町田駅までがモノレールで結ばれ、既存区間と合わせて、多摩地域を南北に縦断する広域的な公共交通軸が形成されます。市内の移動利便性や鉄道駅へのアクセスが向上するだけでなく、路線バスとの役割分担、沿線団地の再生、駅周辺への都市機能の集積、商業や観光の活性化、公共交通への転換による環境負荷の低減など、交通とまちづくりの両面にわたる効果が期待されています。
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