多摩都市モノレールの全体構想

多摩都市モノレールの全体構想とは

多摩都市モノレールは、東京都の多摩地域を南北方向に結び、各都市や既存の鉄道路線を相互に連絡することを目的として計画された都市交通システムです。東京都心へ向かう東西方向の鉄道路線が多い多摩地域において、それらを横断する南北方向の公共交通軸を形成し、都市間の連携や地域内の移動を支える役割を担っています。

多摩都市モノレールには、長期的なネットワークとして総延長約93キロメートルの全体構想があります。ただし、この約93キロメートルは、全区間のルート、駅の位置、建設時期、事業費などが確定した一つの建設計画ではありません。多摩地域の将来の都市構造を見据えて示された広域的な構想であり、需要、採算性、導入空間となる道路、沿線まちづくり、関係自治体との調整などを踏まえ、実現性の高い区間から段階的に検討・整備する考え方となっています。

現在運行している区間

現在営業しているのは、多摩センター駅から立川駅周辺を経由して上北台駅までを結ぶ、延長16.0キロメートル、19駅の区間です。

第1期区間となる上北台駅―立川北駅間5.4キロメートルは1998年11月27日に開業しました。第2期区間の立川北駅―多摩センター駅間10.6キロメートルは2000年1月10日に開業し、現在の多摩センター駅―上北台駅間が一体的に運行されています。

既存線は、東大和市、立川市、日野市、八王子市、多摩市を南北方向に結んでいます。玉川上水駅、立川北駅・立川南駅、高幡不動駅、多摩センター駅などで既存の鉄道路線と接続し、通勤・通学、買い物、通院、観光など、多摩地域の日常的な移動を支える基幹交通となっています。

路線の開業によって、沿線では駅周辺の住宅開発、商業・業務機能の集積、大学や公共施設へのアクセス向上などが進みました。多摩都市モノレールは、単に二つの地点を結ぶ交通機関ではなく、駅を中心とした新たな人の流れを生み出し、沿線の土地利用やまちづくりにも影響を与える都市基盤として位置付けられています。

延伸構想の現在の位置付け

2000年1月にまとめられた運輸政策審議会答申第18号では、上北台駅から箱根ケ崎方面、多摩センター駅から町田方面および八王子方面への延伸が位置付けられました。

その後、2016年4月に国土交通省の交通政策審議会が公表した第198号答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」でも、箱根ケ崎方面、町田方面、八王子方面の3方向が、多摩都市モノレールの延伸に関する路線として改めて位置付けられています。

このうち箱根ケ崎方面と町田方面は、多摩地域の主要な地区間のアクセス利便性向上に資する路線として、事業化に向けた具体的な調整を進めるべき路線とされました。一方、八王子方面については、沿線の需要創出や事業性などに課題があることが示されています。

2026年時点では、3方面の延伸は、それぞれ異なる段階にあります。

方面おおむねの区間現在の位置付け
箱根ケ崎方面上北台駅―JR箱根ケ崎駅付近事業着手・建設に向けた手続き段階
町田方面多摩センター駅―町田駅方面事業化に向けた検討・調整段階
八王子方面多摩センター駅―八王子方面構想・需要創出・採算性の検討段階

箱根ケ崎方面への延伸

箱根ケ崎方面延伸は、現在の北側の終点である上北台駅から、武蔵村山市を経由してJR八高線の箱根ケ崎駅付近まで延伸する事業です。延長は約7.0キロメートルで、新たに7駅が整備されます。

この区間は、3方向の延伸の中で最も事業が進んでいます。2025年3月6日に都市計画決定が行われ、同年5月9日には多摩都市モノレール株式会社が軌道事業特許を取得しました。2025年11月27日には東京都が都市計画事業の認可を受け、延伸事業に着手しています。

さらに、2026年5月22日には、支柱、軌道桁、駅舎などを対象とする軌道第一次分割工事施行認可を取得しました。東京都は、2030年代半ばの開業を目指して事業を進めています。

箱根ケ崎方面延伸が実現すると、鉄道駅のない武蔵村山市に初めて軌道系公共交通の駅が設置されます。JR八高線と多摩都市モノレールが結ばれることで、瑞穂町、武蔵村山市、東大和市、立川市、多摩ニュータウン方面を結ぶ南北方向の交通ネットワークが強化されます。

沿線では、新駅周辺への都市機能の誘導、地域産業や観光資源を生かしたまちづくり、公共交通を中心とした移動環境の整備も進められています。東京都は、モノレール施設の建設だけでなく、駅と沿線地域を一体的に整備する方針を示しています。

町田方面への延伸

町田方面延伸は、現在の南側の終点である多摩センター駅から、町田市内を縦断して町田駅方面まで延伸する計画です。2021年12月には、多摩センター駅から野津田公園、日大三高周辺、小山田桜台団地、桜美林学園、木曽山崎団地、町田市民病院、芹ヶ谷公園周辺などを経由して町田駅方面へ向かう、延長約16キロメートルの基本ルートが選定されました。

町田市と多摩市は、延伸後の利用需要を生み出すため、駅を中心とした生活圏の形成、団地再生、公共施設へのアクセス向上、商業・交流機能の集積などを検討し、2024年3月に「モノレール沿線まちづくり構想」を策定しました。

町田方面延伸では、モノレールの支柱、軌道桁、駅舎などを設置するための道路空間を確保する必要があります。このため、東京都、町田市、多摩市、多摩都市モノレール株式会社などが、道路構造、施設配置、利用需要、建設費、費用対効果、収支採算性などについて検討を進めています。

東京都の「2050東京戦略」では、町田方面延伸について、関係者と事業化に向けた協議・調整を進め、検討を深度化する方針が示されています。

町田方面延伸は、箱根ケ崎方面のように都市計画決定や軌道事業特許を取得した段階には至っていません。駅数、正式な駅位置、事業費、開業年度なども決定していませんが、基本ルートの選定、沿線まちづくり構想の策定、導入空間となる道路の整備など、事業化に必要な準備が進められています。

延伸が実現すれば、多摩センター、立川、町田という多摩地域の主要な都市拠点がモノレールで結ばれます。町田市中央部や北部の交通利便性が向上するとともに、団地再生、町田駅周辺の再整備、野津田公園や町田GIONスタジアムへのアクセス向上など、交通とまちづくりの両面に大きな効果が期待されています。

八王子方面への延伸

八王子方面延伸は、多摩センター駅から八王子市方面へ延伸する構想です。国の交通政策審議会答申では、多摩都市モノレールの延伸路線として位置付けられている一方、事業性に課題があることも示されています。

八王子市では、延伸実現に向けて「多摩都市モノレール八王子ルート検討会議」を設置し、沿線の人口、施設立地、土地利用、将来のまちづくり、利用需要、費用便益、採算性などを検討しています。

2026年4月に開催された第4回検討会議では、沿線需要を創出できる新たなルートと採算性が議題となり、既存線の整備によって生じた地価上昇などの間接的な効果も含めて、延伸の便益を整理する必要性が確認されました。

八王子方面は、現時点では具体的な事業ルートが決定した段階ではありません。市による調査・検討を通じて、沿線のまちづくりと一体となった需要創出や、事業として成立するルートの可能性が検証されています。

全体構想が目指すもの

多摩都市モノレールの全体構想が目指しているのは、単に現在の路線を長くすることではありません。多摩地域の各都市を南北方向に結び、JR中央線、青梅線、南武線、八高線、横浜線、西武拝島線、京王線、京王相模原線、小田急多摩線など、東西方向を中心とする既存鉄道との接続を強化することにあります。

ネットワークが拡大すれば、東京都心を経由せずに多摩地域内を移動しやすくなり、通勤・通学、買い物、通院、行政手続き、観光、イベントなど、さまざまな目的の移動経路が増えます。鉄道駅から離れた地域の交通利便性を高め、路線バス、自転車、徒歩、デマンド交通などと連携した公共交通体系を構築する効果も期待されます。

同時に、新駅の周辺では、住宅、商業、医療、福祉、教育、文化、交流などの都市機能を集め、公共交通を中心として暮らせる市街地を形成することが重要になります。モノレールの延伸と沿線まちづくりを一体的に進めることで、新たな利用需要を生み出し、路線の持続可能性を高めることにつながります。

多摩都市モノレールの約93キロメートルに及ぶ全体構想は、短期間に一括して完成させる計画ではなく、多摩地域の将来を見据えた長期的な交通ネットワーク構想です。現在は、既存線を基礎として、箱根ケ崎方面の事業を進めるとともに、町田方面の事業化に向けた検討、八王子方面の需要創出と採算性の検証が、それぞれの段階で進められています。

NPO法人多摩モノレールとまちづくりは、この全体構想のうち、特に多摩センター駅から町田駅方面への延伸を軸として、モノレールと沿線まちづくりに関する調査、情報発信、講演活動、関係機関との意見交換などに取り組んでいます。モノレールの実現を交通施設の整備だけで終わらせず、地域の暮らしや都市の将来像を考える機会につなげていくことを目指しています。


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