箱根ケ崎方面延伸から見るモノレール事業化の流れ
最終更新:2026年7月
多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面延伸は、上北台駅から武蔵村山市を経由し、JR箱根ケ崎駅付近までの約7キロメートルを延伸する事業です。新たに7駅を設置し、2030年代半ばの開業を目指して整備が進められています。
箱根ケ崎方面延伸では、事業化に向けた調査と基本設計、環境影響評価、都市計画決定、軌道事業特許、都市計画事業認可、工事施行認可という手続きが進められてきました。
これらは、町田方面延伸が今後進む場合にも参考となる手続きです。ただし、鉄軌道事業の手続きは、路線の規模、ルート、道路の整備状況、事業主体、環境条件、用地取得の状況などによって異なります。町田方面延伸が、箱根ケ崎方面と全く同じ順番や期間で進むと決まっているわけではありません。
モノレール開業までの手続きは重なりながら進む
鉄軌道事業の手続きは、すべてが完了してから次の段階へ移る、単純な一本道ではありません。
環境影響評価と都市計画の検討を並行して進める場合があり、軌道事業特許の申請も、都市計画手続きと重なることがあります。道路整備や沿線まちづくりも、モノレール本体の手続きに先行して進められます。
箱根ケ崎方面延伸は、道路整備、モノレール計画、沿線まちづくりを一体的に進めてきた事例です。
おおまかな流れを整理すると、次のようになります。
国の答申・事業性の検討
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事業化に向けた調査・基本設計
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環境影響評価・都市計画手続き
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軌道事業特許
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都市計画事業認可
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工事施行認可
↓
用地取得・詳細設計・建設工事
↓
検査・開業
実際には、これらの一部が並行して進みます。
事業化に向けた調査と基本設計
箱根ケ崎方面延伸は、2000年の運輸政策審議会答申第18号と、2016年の交通政策審議会答申第198号に位置付けられました。
東京都は2020年度予算に、延伸の事業化に向けた現況調査と基本設計などを盛り込みました。2020年度から、沿線自治体や交通事業者との協議を行いながら、構造、建設費、利用需要、収支などを具体化する調査が進められています。
この段階では、まだ工事を始めるための法的認可を得たわけではありません。ルートや構造を具体化し、事業として成立するかを確認する準備段階です。
環境影響評価
一定規模以上の都市施設を整備する場合、事業が周辺環境へ与える影響を事前に調査、予測、評価する手続きが行われます。
箱根ケ崎方面延伸では、東京都環境影響評価条例に基づき、次の手続きが進められました。
2022年10月26日 環境影響評価調査計画書の提出
どの地域を、どの方法で調査し、どの環境項目を評価するかを示す計画書です。
2023年11月29日 環境影響評価書案の提出
現地調査や予測を踏まえて、事業による環境影響と環境保全措置をまとめた案です。住民は、環境保全の観点から意見書を提出できます。
2024年5月1日 評価書案に係る見解書の提出
評価書案に対して提出された意見について、事業者の考え方や対応を示したものです。
2025年2月6日 環境影響評価書の提出
意見や審査結果などを踏まえ、最終的な予測、評価、環境保全措置をまとめたものです。
箱根ケ崎方面延伸では、騒音・振動、土壌汚染、日影、電波障害、景観、史跡・文化財、自然との触れ合い活動の場、廃棄物の8項目について予測・評価が行われました。
環境影響評価は、単に環境への影響の有無を判定するものではありません。影響を可能な限り回避・低減するため、構造や施工方法、工事時間、騒音対策、景観への配慮などを計画へ反映する役割があります。
都市計画手続き
モノレールのルート、駅、専用道、関連する道路などを都市施設として位置付ける手続きが、都市計画手続きです。
箱根ケ崎方面延伸では、2022年10月に都市計画素案説明会が行われました。2023年12月には、都市計画案、環境影響評価書案、関連する都市計画道路の変更案について住民説明会が開催されています。
環境影響評価書の提出後、2025年3月6日に、モノレール、都市モノレール専用道、関連する都市計画道路について、都市計画決定・変更が行われました。関連道路では、駅舎や支柱を設置するために必要な道路幅員の変更も行われています。
都市計画決定によって、ルートや施設の区域が都市計画上明確になります。ただし、都市計画決定だけで直ちに用地取得や工事を始められるわけではありません。
軌道事業特許
都市モノレールは、軌道法に基づく軌道事業です。モノレールを運行し、運輸事業を経営するには、国土交通大臣の特許を受ける必要があります。
多摩都市モノレール株式会社は、2024年7月23日、上北台駅から箱根ケ崎駅付近までの延伸区間について、軌道事業特許を申請しました。
国土交通大臣は審査を行い、2025年5月9日付で軌道事業を特許しました。
軌道事業特許は、対象区間で運輸事業を経営する法的な資格に当たります。特許を受けたことは、延伸事業が大きく前進したことを意味しますが、特許だけで建設工事を開始できるわけではありません。
都市計画事業認可
都市計画決定された施設について、施行者、事業区域、事業期間などを定め、実際の事業として進めるために受けるのが都市計画事業認可です。
東京都は2025年11月27日、国土交通省から都市計画事業の認可を取得し、箱根ケ崎方面延伸事業に着手しました。
認可された区間は、東大和市上北台一丁目から瑞穂町箱根ケ崎までの7,055メートルです。事業期間は2025年度から2034年度まで、東京都が整備するインフラ部の事業費は904億円とされています。
車両、電車線、券売機など、多摩都市モノレール株式会社が整備するインフラ外部を含めた事業費総額は約1,290億円です。
都市計画事業認可によって、事業区域内の用地取得や施設整備を、都市計画事業として本格的に進める基盤が整います。
工事施行認可
軌道法では、軌道事業特許を取得した事業者が実際に工事を行うために、工事の具体的な設計について国土交通大臣の認可を受ける必要があります。
多摩都市モノレール株式会社は、軌道事業特許取得後の2025年5月20日、「軌道第一次分割工事施行認可」を申請しました。
2026年5月22日、国土交通大臣から認可を取得しています。第一次分割認可の主な対象は、支柱、軌道桁、駅舎など、土木・建築関係の施設です。
箱根ケ崎方面延伸では、工事施行認可を2つに分け、土木関係を中心とした事項を第一次、電力、信号、通信など電気関係を中心とした事項を第二次として申請する方式が採られています。
工事施行認可は、軌道施設の設計が技術上、安全上の基準を満たしているかを確認する手続きです。
道路整備と用地取得
箱根ケ崎方面延伸では、モノレールの導入空間となる新青梅街道の拡幅整備が、モノレール本体の手続きに先行して進められてきました。
延伸に合わせ、立川都市計画道路3・2・4号新青梅街道線、福生都市計画道路3・4・4号新青梅街道線、福生都市計画道路3・4・10号東京環状線の整備や変更が行われています。
駅を設置する場所では、一般の走行区間より広い道路空間が必要となるため、追加の用地測量や用地取得も進められます。
モノレール本体と道路は別々の施設ですが、都市モノレールでは両者を一体的に整備しなければ事業が成立しません。
工事施行認可後の流れ
工事施行認可を取得した後も、すぐに全区間で一斉に建設工事が始まるとは限りません。
用地取得、埋設物の移設、詳細設計、工事発注、施工ヤードの確保などを進め、準備が整った区間から工事へ移ります。支柱の基礎工事、支柱設置、軌道桁架設、駅舎建設、電気・信号・通信設備の設置、試運転、国による検査などを経て、開業を迎えます。
工事は道路交通を維持しながら行う必要があるため、交通規制や施工順序についても細かな調整が必要です。
箱根ケ崎方面と町田方面の違い
箱根ケ崎方面延伸は約7キロメートルで、ルートの大部分が新青梅街道に沿っています。導入空間となる道路拡幅も、モノレール事業に先行して長期間進められてきました。
町田方面延伸は約16キロメートルで、箱根ケ崎方面より長く、住宅団地、学校、公園、医療施設、中心市街地など、性格の異なる地域を通ります。丘陵地も多く、既存道路の状況や周辺の土地利用も区間ごとに異なります。
2026年7月時点では、町田方面について、道路などの導入空間、沿線まちづくり、収支採算性が課題とされ、複数ルートの計画深度化、事業費の精査、事業性の比較検証が進められています。
このため、箱根ケ崎方面の経過は、町田方面延伸の手続きを理解するための有力な参考事例ですが、同じ年数や同じ工程をそのまま当てはめることはできません。
町田方面でも、事業化に向けた方針が固まった後は、都市計画、環境、軌道法などに関する手続きが必要になると考えられます。しかし、具体的にどの手続きが必要となり、どの順序で進めるかは、最終的なルート、施設計画、事業主体、関係機関との協議によって決まります。
箱根ケ崎方面延伸が示しているのは、モノレールの実現には、交通施設の計画だけでなく、道路整備、沿線まちづくり、環境への配慮、運行事業者の経営、法的な許認可を一体的に進める必要があるということです。

