多摩モノレール町田方面延伸「決まったこと・まだ決まっていないこと」

多摩モノレール町田方面延伸「決まったこと・まだ決まっていないこと」

多摩都市モノレールの町田方面延伸について、「ルートはもう決まったのか」「駅はどこにできるのか」「いつ開業するのか」といった質問が多く寄せられています。

町田方面延伸では、すでに基本となるルート案が選定され、東京都、町田市、多摩市などによって、計画の具体化に向けた検討が進められています。一方、駅の位置や駅数、開業時期、現在の計画条件に基づく事業費など、現時点では決まっていない事項も少なくありません。

ここでは、2026年7月時点で公表されている情報をもとに、「決まったこと」と「まだ決まっていないこと」を整理します。

現在の状況を一覧で見る

延伸する方向:多摩センター駅から町田駅方面

基本ルート:B案を基本とする方針を選定済み

延伸距離:約16キロメートル

詳細なルート・線形:検討中

駅の位置:未決定

駅名:未決定

駅数:正式決定なし

現在の計画条件に基づく概算事業費:未公表

収支採算性・事業性:さらなる精査・検討を実施中

開業時期:正式決定なし

事業主体・費用負担の詳細:未決定

モノレール本体工事:未着手

導入空間となる道路:整備や用地取得に向けた取組を推進中

東京都は、選定されたB案を基本に、沿線まちづくりの具体化や収支採算性のさらなる精査を進める方針を示しています。ただし、その結果によっては、ほかのルート案を改めて検討する可能性も残されています。

決まったこと① 多摩センター駅から町田駅方面へ延伸する計画

町田方面延伸は、現在の終点である多摩センター駅から町田駅方面へ路線を延ばし、多摩地域の南北方向の交通ネットワークを強化する計画です。

国の交通政策審議会は2016年の答申第198号で、多摩センター駅から町田駅までの延伸を「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」の一つに位置付けました。そのうえで、導入空間となる道路整備の進捗を見極めながら、事業化に向けて関係自治体や鉄道事業者などが具体的な調整を進めるべきだとしています。

これを受け、東京都は2019年に「多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会」を設置しました。導入空間となる道路が確定していない区間について、客観的かつ合理的なルートを検討するための委員会で、2019年10月から2021年12月まで計4回開催されています。

町田方面へ延伸するという方向性そのものは、国や東京都、沿線自治体の計画や取組の中に、すでに位置付けられています。

決まったこと② 基本となるルート案が選定された

ルート検討委員会では、複数のルート案について、利用者数、速達性、沿線まちづくりとの相乗効果、道路整備の状況、費用対効果、収支採算性などを比較しました。

その結果、2021年12月27日に開催された第4回ルート検討委員会で、B案が最適な案として選定されました。東京都は、このB案を基本に検討を進める方針を示しています。

選定された基本ルートは、多摩センター駅から小野路、野津田公園周辺、図師、下小山田、小山田桜台、桜美林学園、町田山崎団地・町田木曽住宅、町田市民病院、町田高校周辺などを経由し、町田駅方面へ至る全長約16キロメートルのルートです。

このため、町田方面延伸は「ルートが何も決まっていない」状態ではありません。多摩センター駅と町田駅を結ぶ基本的な経由地域は、すでに示されています。

「ルート案の選定」と「最終的な線形の決定」は同じではない

注意したいのは、2021年に選定されたB案が、そのまま工事に使われる最終的な事業計画や設計図ではないという点です。

東京都は、B案を基本としながら、沿線まちづくりによる需要の創出、収支採算性、駅数などの条件、導入空間となる道路の確保といった課題について、検討を深める方針です。

道路上のどの位置に支柱や軌道桁を設けるのか、交差点や河川をどのように通過するのか、どこに曲線や勾配を設けるのかといった詳細な線形は、今後の調査や設計を通じて具体化されます。

東京都は、沿線まちづくりや収支採算性の精査結果によっては、A案やC案を改めて検討する場合があることも明記しています。したがって、「B案が基本ルートとして選定されたこと」と「最終的なルートや構造が確定したこと」は分けて考える必要があります。

決まったこと③ 沿線まちづくりと一体で検討する

町田方面延伸は、モノレールの軌道や駅だけを整備する計画ではありません。

町田市と多摩市は、モノレールの利用需要を生み出し、延伸による効果を沿線地域へ広げるため、2022年8月に「多摩都市モノレール町田方面延伸 沿線まちづくり検討会」を設置しました。市民意見募集などを経て、2024年3月に「モノレール沿線まちづくり構想」を策定しています。

この構想では、モノレールの整備を契機として、駅周辺の拠点づくり、団地再生、公共交通の再編、生活利便施設の充実、地域資源の活用などを進める方向性が示されています。

町田駅周辺をはじめ、木曽山崎団地地区、忠生周辺、小山田桜台周辺などでは、交通結節機能、住宅、商業、公共施設、道路、バス交通などを相互に結び付けながら、地域ごとの将来像を具体化していくことになります。

モノレールを整備するだけでは、十分な利用需要やまちづくり効果は生まれません。駅周辺の土地利用、既存の鉄道や路線バスとの接続、住宅や商業施設の配置などを一体的に考えることが、延伸の事業性を高めるうえでも重要です。

決まったこと④ 導入空間となる道路の確保を進めている

都市モノレールを整備するためには、軌道桁や支柱、駅などを設置する空間が必要です。

町田方面延伸では、主に道路空間を利用してモノレールを導入することが想定されているため、導入空間となる都市計画道路の整備が、事業化に向けた重要な条件となります。

町田市は「多摩都市モノレール町田方面延伸加速化プロジェクト」として、東京都が道路事業に着手するまでの間、町田都市計画道路3・3・36号線の事業用地を先行して取得しています。

対象区間は、都立町田高校付近から芹ヶ谷公園付近までの約1キロメートルです。東京都の道路事業着手後、町田市が取得した土地を東京都へ売却することで、道路整備を円滑に進める仕組みとなっています。

ただし、これはモノレールの導入空間となる道路用地を確保する取組です。モノレール本体の建設工事が始まったことを意味するものではありません。

まだ決まっていないこと① 正式な駅の位置

選定された基本ルート図には、小野路、野津田公園、小山田桜台、桜美林学園、町田市民病院、町田高校など、主な経由地域や施設が示されています。

しかし、これらの表示は、ルートが通過する地域や周辺の主要施設を表したものであり、正式な駅の位置を示したものではありません。

駅の位置を決めるには、利用者数の見込み、周辺道路との接続、路線バスとの乗り換え、駅前広場の確保、土地利用、勾配や曲線などの技術的条件を詳しく検討する必要があります。

そのため、「野津田公園周辺を通ること」と「野津田公園のどこに駅を設置するかが決まっていること」は別の話です。

まだ決まっていないこと② 駅名と駅数

正式な駅の位置が決まっていないため、駅名も決定していません。

公表されている図面に記載された「野津田公園」「小山田桜台」「桜美林学園」などの名称は、主な経由地域や施設を示すものです。将来の正式な駅名を表したものではありません。

駅数についても、正式な事業計画としては決まっていません。第4回ルート検討委員会では、B案の選定後も、駅数などの条件を含めて収支採算性をさらに精査する必要があるとされています。

駅を増やせば沿線から利用しやすくなる一方、建設費が増え、全体の所要時間も長くなります。需要予測、駅間距離、速達性、建設費、周辺のまちづくりなどを踏まえ、今後具体的に検討されます。

まだ決まっていないこと③ 現在の計画条件に基づく事業費

町田方面延伸について、現在の選定ルートや計画条件に基づく正式な概算事業費は、現時点では公表されていません。

事業費は、延伸距離だけで決まるものではありません。駅の数や構造、道路の整備状況、交差点や河川との交差方法、軌道や支柱の構造、電力・信号設備、車両や車両基地への対応、資材価格や人件費の動向などによって大きく変わります。

モノレール本体だけでなく、導入空間となる道路、駅前広場、バス乗り場、歩行者空間など、関連する都市基盤の整備も必要です。

なお、2016年の交通政策審議会答申の検討資料では、多摩センター駅から町田駅までを13.4キロメートル、総事業費を1,700億円とする分析上の前提が示されていました。

ただし、この金額は2016年当時の想定ルートや価格条件に基づく概算値です。2021年に選定された全長約16キロメートルのB案について、現在の物価や設計条件を反映した正式な事業費ではありません。

過去の試算や、他路線を参考にした推計値を、そのまま現在の正式な事業費として受け止めないよう注意が必要です。

まだ決まっていないこと④ 開業時期

町田方面延伸について、東京都が正式に決定した開業年度や開業目標年は、現時点では示されていません。

東京都は「2050東京戦略」において、町田方面延伸を「検討を深度化」する路線に位置付けています。箱根ケ崎方面延伸のように、具体的な開業目標を掲げて事業を進めている段階とは異なります。

開業時期を具体的に示すためには、ルートや駅位置の検討、需要予測、事業費と財源の整理、整備主体や費用負担の調整、都市計画、環境影響評価、軌道法上の手続、設計、道路整備、用地取得、建設工事などを進めなければなりません。

講演会や地域の資料などでは、他路線の進捗を参考にした将来時期の目安や想定が示されることがあります。こうした想定は、計画の進め方や必要期間を考えるための参考として重要ですが、東京都が行政計画として決定した正式な開業目標とは区別して受け止める必要があります。

まだ決まっていないこと⑤ 事業主体や費用負担の詳細

町田方面延伸を実際に事業化するためには、モノレール施設、道路、駅前広場、関連設備などについて、整備主体と費用負担を整理する必要があります。

都市モノレールの整備には、道路管理者、軌道事業者、東京都、沿線自治体など、複数の関係者が関わります。

誰がどの施設を整備し、どの費用を負担するのか。国の補助制度をどのように活用するのか。運行や施設保有をどのような体制で行うのか。こうした具体的な事業スキームは、今後の事業化検討の中で調整されることになります。

現時点では、町田方面延伸区間について、整備主体や費用負担の詳細が正式に決定したとは公表されていません。

現在はどの段階なのか

町田方面延伸は、「構想だけで何も進んでいない段階」ではありません。

基本ルートとなるB案が選定され、町田市と多摩市による沿線まちづくり構想も策定されました。導入空間となる道路の検討や用地の先行取得、需要の創出、収支採算性など、事業化に必要な条件を具体化する取組が進んでいます。

一方、都市計画や事業計画が確定し、モノレール本体の設計・建設へ移行した段階でもありません。

現在地を簡潔に表すと、次のようになります。

町田方面延伸は、基本的な経由地域を選ぶ段階から一歩進み、事業化に必要な条件を具体的に詰めている段階です。

ルート、駅、需要、事業費、収支採算性、道路整備、事業主体、沿線まちづくりなどの条件が整理され、関係者間の調整が進むことが、次の手続へ移行するための重要なポイントとなります。

今後、注目したい動き

今後は、詳細なルートや線形、駅の位置と数、需要予測、概算事業費、収支採算性、事業主体、費用負担、道路整備の方針などが、どのように具体化されるかが焦点になります。

これらの条件が整理された後、都市計画や環境影響評価をはじめとする法定手続、軌道事業に関する手続、設計、道路整備、建設工事などへ進むことになります。

NPO法人多摩モノレールとまちづくりでは、東京都、町田市、多摩市などから新たな情報が公表された際には、その内容を確認し、本記事を随時更新していきます。

町田方面延伸の実現には、モノレールの整備だけでなく、駅を中心としたまちづくり、既存の鉄道や路線バスとの連携、沿線地域の魅力向上、利用需要の創出が欠かせません。

計画の進捗を正確に共有しながら、モノレールとともに発展する地域の将来像を考えていくことが重要です。

※本記事は、2026年7月時点で公表されている国土交通省、東京都、町田市、多摩市などの資料をもとに作成しています。今後の検討や行政手続により、記載内容が変更される場合があります。

出典・参考資料

・国土交通省 交通政策審議会答申第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」(2016年4月20日)

・国土交通省「鉄道ネットワークのプロジェクトの検討結果」(2016年7月15日)

・東京都都市整備局「多摩都市モノレール町田方面延伸 ルート検討委員会」

・東京都都市整備局「第4回 多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会 議事概要」(2021年12月27日)

・東京都都市整備局「多摩都市モノレール町田方面延伸ルート検討委員会 検討結果」

・東京都「2050東京戦略」

・町田市「多摩都市モノレールの延伸計画」

・町田市「多摩都市モノレール町田方面延伸ルートが選定されました」

・町田市・多摩市「モノレール沿線まちづくり構想」(2024年3月)

・町田市「多摩都市モノレール町田方面延伸加速化プロジェクト」

・町田市「町田都市計画道路3・3・36号線の事業用地を取得しました」

・町田市「多摩都市モノレール町田方面延伸促進の概要」

各資料の内容および最新情報については、国土交通省、東京都都市整備局、町田市、多摩市の各公式ホームページをご確認ください。