講演会開催
2026年7月11日、町田市民フォーラムにおいて、講演会「町田方面延伸における 多摩のまちづくりとモノレール」を開催しました。
本講演会は、NPO法人多摩モノレールとまちづくりが主催し、町田市が共催、町田・相模原経済同友会及び町田商工会議所の後援により実施したものです。多摩都市モノレール町田方面延伸が、町田市の交通体系や都市構造、沿線地域の暮らしにどのような変化をもたらすのかを、市民の皆様とともに考える機会として企画しました。
参加申込みは早い段階から相次ぎ、定員に達したため、開催前に受付を終了しました。当日は多くの皆様にご来場いただき、町田方面延伸に対する関心と期待の高さを改めて感じる講演会となりました。
講演会は、NPO法人多摩モノレールとまちづくりの渋谷俊徳代表理事による主催者挨拶に続き、稲垣康治町田市長の挨拶で幕を開けました。
稲垣市長は、自身も町田で生まれ育ち、幼い頃からモノレール延伸の話を聞いてきたと振り返りました。長年にわたって語られてきた構想を次の世代へ先送りするのではなく、自分たちの世代で実現させたいとの強い決意を示しました。

市内の公共交通については、モノレールを「木の幹」、路線バスをそこから伸びる「枝」に例え、両者がそれぞれの役割を担う持続可能な公共交通ネットワークを構築していく必要があると述べました。その実現には、市民、事業者、行政、経済界、地域団体が立場を越えて連携し、「町田ワンチーム」となって取り組むことが重要であると呼びかけました。
続いて、小池百合子東京都知事から寄せられたビデオメッセージを上映しました。
小池知事は、約400万人が暮らし、大学や研究機関が集積する多摩地域の特徴に触れ、その中でも町田市は、町田駅を中心に多くの人が行き交う中核的な拠点であると述べました。多摩都市モノレールの町田方面延伸は、町田市だけでなく、多摩地域全体の魅力をさらに高める重要な取組であるとの考えが示されました。
町田駅周辺の将来像や市内の団地再生など、町田市が進めている沿線まちづくりについても触れ、東京都として町田市をはじめとする関係者と緊密に連携し、計画の具体化を進めていく姿勢が示されました。
東京都による講演「多摩のまちづくりとモノレール」

東京都都市整備局都市基盤部長の澤井正明氏が「多摩のまちづくりとモノレール」をテーマに、東京都が目指す都市構造、多摩地域の将来像、多摩都市モノレール延伸の取組、町田方面延伸の事業化に向けた検討状況について講演しました。
東京都では、2050年代を見据え、「個性の磨き上げ」「人中心のまちづくり」「交流・連携の強化」という視点から、今後の都市づくりを進める方向性を示しています。東京と周辺県の都市、産業拠点、物流拠点を鉄道や道路などの広域的な交通基盤で結び、都県を越えた交流を活発にすることで、首都圏全体の活力を高めていく考えです。
多摩地域では、JR線、京王線、小田急線、西武線など、東西方向に延びる鉄道路線が複数整備されています。一方で、南北方向を結ぶ鉄道ネットワークは限られており、多摩都市モノレールは、これらの鉄道路線や地域の主要な拠点を南北方向に結ぶ重要な交通軸として位置づけられています。
現在の多摩都市モノレールは、多摩センター駅から立川を経て上北台駅までの約16キロメートルを結び、19の駅が設けられています。沿線ではモノレールの整備とあわせて、土地区画整理や駅周辺開発などが進められてきました。立川駅周辺は、都市基盤や商業機能が集積し、多摩地域を代表する都市拠点の一つへと発展しています。
延伸計画については、上北台駅から箱根ケ崎方面、多摩センター駅から町田方面、八王子方面の三方向が国の答申に位置づけられています。
先行する箱根ケ崎方面延伸は、2025年3月に都市計画決定、同年5月に軌道事業特許を取得し、2026年5月には軌道第一次分割工事施行認可を受けました。上北台駅からJR八高線の箱根ケ崎駅付近まで約7キロメートルを延伸し、新たに7駅を設置する計画で、2030年代半ばの開業を目指して手続きや整備が進められています。
箱根ケ崎方面では、モノレールの導入空間となる新青梅街道の整備に加え、武蔵村山市や瑞穂町で区画整理や沿線まちづくりが長年にわたって進められてきました。道路の整備、駅周辺のまちづくり、将来の利用者を生み出す取組を計画的に進めてきた事例として、町田方面延伸を考えるうえでも重要な先行例となります。
町田方面延伸については、2021年12月に開催されたルート検討委員会において、今後の検討の基本となるルートが選定されました。多摩センター駅から野津田公園、小山田桜台団地、桜美林学園、木曽山崎団地、町田市民病院、芹ヶ谷公園などを経由し、町田駅周辺へ至る約16キロメートルのルートです。
現在は、この基本ルートを軸に、沿線まちづくり、収支採算性、費用対効果、導入空間となる道路の構造などについて、東京都、町田市、関係者による検討が進められています。
一方、想定ルート上には、モノレールを整備するために必要な道路幅員が確保されていない区間があります。町田市立陸上競技場付近や小山田桜台団地付近などには、既存道路の幅が十分でない場所や、導入空間となる都市計画道路が未整備の区間も含まれています。
モノレールは、一般的に道路の中央部に支柱を設置し、その上に軌道桁や駅を整備します。車体と周辺建物との間隔や消防活動に必要な空間を確保するため、一定の道路幅が必要です。駅の設置場所では、ホームや階段、エレベーターなどの施設を整備するため、通常の走行区間よりも広い空間が求められます。
こうした条件を踏まえ、道路とモノレール施設をどのような構造で整備するのか、東京都、地元自治体、運行事業者がどのように役割を分担するのかについて、具体的な検討を進める必要があります。
建設費の上昇、人口減少、少子高齢化、災害への対応といった社会情勢も踏まえながら、費用対効果や収支採算性、開業後の安定した経営を確保することが求められます。モノレールを整備するだけでなく、沿線に住む人や訪れる人を増やし、継続的な利用需要を生み出すまちづくりを一体的に進めることが重要になります。
東京都、町田市、運行事業者には、それぞれ異なる役割があります。東京都は、事業計画の検討や課題の解決、延伸の実現に向けた支援を担います。運行事業者には、安全で利便性の高い交通サービスの提供と、開業後も安定して事業を継続するための経営努力が求められます。町田市には、駅周辺や沿線地域のまちづくりを進め、利用者を生み出すとともに、地域の機運を高めていく役割が期待されています。
町田市による講演「多摩都市モノレールと町田のまちづくり」

町田市都市づくり部中心市街地・モノレール推進担当部長の萩野功一氏が、「多摩都市モノレールと町田のまちづくり」と題して講演しました。
町田市にとっての延伸の意義として、南北方向の公共交通を充実させ、市内の移動を便利にすること、将来にわたって市民の移動手段を確保すること、沿線地域の魅力向上と活性化につなげることの三つが示されました。
町田市内にある既存の鉄道駅は、市域の外縁部に位置しており、市内中央部を含む多くの地域では、路線バスが日常の移動を支えています。しかし、近年はバス運転士の不足などにより、市内でも減便や最終便の繰り上げが行われ、従来の運行規模を維持することが難しくなっています。
輸送力、定時性、速達性に優れたモノレールが市内中央部に整備されれば、多摩地域の南北方向の移動が便利になるだけでなく、市内各地域から町田駅、多摩センター駅、沿線の主要施設などへのアクセスも向上します。
将来は、モノレールを市内交通の幹線とし、新たに設置される駅と周辺地域を路線バスで結ぶ交通体系が想定されています。モノレールを木の幹、路線バスを枝とするように、それぞれが適した役割を担うことで、効率的で持続可能な公共交通ネットワークを構築していく考えです。
駅周辺には、モノレール、路線バス、自転車などを円滑に乗り継ぐための交通広場や駐輪場を整備します。町田駅周辺に集中するバスの一部が沿線のモノレール駅へ接続する形になれば、町田駅前へ乗り入れるバスの台数が抑えられ、道路混雑や交通環境の改善にもつながると期待されています。
町田市は、延伸を単なる交通施設の整備としてではなく、沿線地域の将来を大きく変えるまちづくりの機会として捉えています。
2024年には、多摩市と共同で「モノレール沿線まちづくり構想」を策定しました。「みんなが安心して快適に住み続けられる わたしの“ココチよさ”がかなうまち」を将来ビジョンに掲げ、幅広い世代が暮らせる住環境、買い物や仕事ができる場所、緑やスポーツに親しめる空間、人と人との交流が生まれる地域を目指しています。
町田市内の沿線地域は、北部丘陵地域、忠生地域、木曽山崎団地地区、町田駅周辺の四つのエリアに分け、それぞれの特徴を生かしたまちづくりを進めます。
北部丘陵地域では、豊かな緑や農の風景を生かした活動や交流を促します。忠生地域では、子育て、テレワーク、運動、スポーツなどを通じ、健康的に暮らせる地域を目指します。木曽山崎団地地区では、幅広い世代が暮らし、多くの人が集まる新たなにぎわいの拠点を形成します。町田駅周辺では、商業、飲食、文化、仕事、娯楽などの都市機能が集積する広域的な拠点へ発展させていく考えです。
町田駅周辺は、1970年代から1980年代にかけて行われた国鉄原町田駅の移転や大規模な都市整備によって、現在のまちの骨格がつくられました。それから約50年が経過し、建物や交通施設の老朽化が進んでいます。
町田市は2024年に「町田駅周辺開発推進計画」を策定し、「いつだって町田 新たなにぎわいと交流の創出」をコンセプトに、官民が連携した再整備を進める方針を示しました。JR横浜線、小田急線、将来のモノレールという三つの鉄軌道を受け止める、便利で快適な駅前空間の形成を目指します。
交通機能の集約、商業・業務機能の充実、文化・交流施設の整備、広場や歩行者空間の創出などを進めることで、町田駅周辺を多摩地域の中核的な都市拠点としてさらに発展させていきます。
木曽山崎団地地区では、団地の再生に向けた取組が進められています。同地区は約107ヘクタール、総戸数9,560戸を有する大規模団地ですが、整備から約60年が経過し、建物や施設の高経年化、少子高齢化、地域活力の低下などが課題となっています。
これまで、小中学校跡地を活用し、桜美林大学東京ひなたやまキャンパス、町田消防署、市立山崎保育園、学校給食センターなどが整備されてきました。2026年3月に改定されたまちづくり構想では、将来のモノレール新駅を想定しながら、駅周辺の交通拠点や商業・娯楽機能、憩いの空間、多様な世代が暮らせる住宅などの整備を進める考えが示されています。
沿線では、スポーツを生かしたまちづくりも進んでいます。2023年に開園した忠生スポーツ公園には、芝生広場、複合遊具、健康遊具、ジョギングコース、散策路、3人制バスケットボールコートなどが整備されています。
木曽山崎団地地区では、町田木曽山崎パラアリーナの整備も進められており、2028年10月の供用開始が予定されています。障害の有無や年齢、性別にかかわらず、誰もがスポーツを楽しめる施設を整備し、地域の魅力を高めるとともに、将来のモノレール利用にもつなげていく考えです。
町田市では、延伸の早期実現に向け、モノレールの導入空間となる都市計画道路の用地を先行して取得する「町田方面延伸加速化プロジェクト」も進めています。
対象となるのは、都立町田高校付近から芹ヶ谷公園付近までの約1キロメートルの区間です。東京都が事業に着手するまでの間に町田市が必要な用地を取得し、事業開始後に東京都へ引き渡すことで、将来の道路とモノレールの整備を円滑に進めることを目的としています。
二つの講演を受け、稲垣市長は、町田方面延伸が町田の未来のまちづくりに必要な事業であるとの認識を改めて示しました。
事業の実現には、走行空間となる道路の確保、駅周辺の整備、沿線人口や交流人口の拡大、公共交通網の再編、収支採算性の確保など、さまざまな課題があります。これらの課題や地域への影響を十分に検討しながら、市民、事業者、東京都、町田市が一体となり、強い決意を持って延伸の実現へ向けて進んでいく考えが表明されました。
今回の講演会を通じて、町田方面延伸は、単にモノレールの線路を延ばす事業ではなく、町田市の交通体系、都市構造、駅周辺、住宅団地、スポーツ施設、緑地などを一体的に考える、総合的なまちづくりの取組であることが改めて共有されました。
NPO法人多摩モノレールとまちづくりとしても、延伸によって期待される効果だけを伝えるのではなく、事業化に向けた課題や、沿線地域に求められる取組について、分かりやすく正確に発信していくことが重要だと考えています。
今後も、市民、行政、商工会議所、経済団体、交通事業者、地域で活動する団体の皆様をつなぎながら、モノレールのある町田の将来像をともに考える場をつくってまいります。講演会や情報発信などを通じ、町田方面延伸に対する理解と機運を着実に高めていきます。
ご来場いただいた皆様、ご登壇いただいた皆様、開催にあたりご協力いただいた関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。

開催日:2026年7月11日
会場:町田市民フォーラム
主催:NPO法人多摩モノレールとまちづくり
共催:町田市
後援:町田・相模原経済同友会、町田商工会議所
文責:田村拓丸 写真:中山新(MJWS)



